2014年4月19日土曜日

northland fly rod その2

その2

それからというもの、渓流のドライフライばかりやった。コツを掴めたのか、それからはヤマメもイワナも、あれっ?というぐらい、反応も多くなり、合わせのタイミングも覚えてきた。季節も、ほとんど冬の状態から、春になって、魚も水面のエサに眼がいくようだ。
Tさんにこの釣りを教わった中で一番驚いたのは、透明度がある川なら、解禁直後の冬景色の中でも、渓流魚は瀬に居て、ドライフライに食いつくことだ。この時期は、川底でじっとしているというのが、それまでハウツー本の定説だった。
またフライフィッシングというと、川幅のあるチョークストリームの釣りのイメージだったが、落ち込みと淵と瀬が連続する谷川のような渓相でも、テンカラ釣りのように上流に釣り上がることができるのも、新鮮だった。
休みの日だけでなく、空き時間があれば、ノースランド片手に釣りをしていた。雪解け水がおさまると、本流などいろんな川に通った。Tさんにウエットの釣り方も教わり、毛鉤とルアーの中間のような光るフライをニジマスがひったくるように出た。


その頃、釣り雑誌で紹介される渓流のドライの釣り方が、ショートリーダーで、ピンポイント狙い撃ちから、ロングリーダーでフライがナチュラルに流れる距離と時間を長くして、魚に違和感を持たせないで喰わせようという、俗に言うところの岩井スタイルに代わりつつあった。ニンフなどの水中に沈める釣りも、脈釣りに近いアウトリガーから、マーカー浮きを使ったルースニングが多くなった。そのスタイルに合わせて、ロッドもシャープなティップアクションから、やや長めのスローアクションタイプが増えていった。

私はどうも岩井スタイルの釣りが苦手で、従来スタイルで通した。自分のノースランドの竿も、ショートリーダーに向いていた。4番のラインに、竿よりやや短いリーダー。その先に、フライ。早く沈めたい時は、ガン玉おもり。それだけ。
シンプルな仕掛けだけど、水面から底まで狙える。リーダーが短いと、狙いの筋へ入り易いし、フライの位置も把握しやすい。誘いもかけられるし、流し毛鉤のように、扇引きもできれば、ルアーのように下流から上流へ逆引きも出来る。これが竿の2本分の長さのリーダーだったり、途中にウキが付いてると、竿へのダイレクトな当たりが伝わりづらくなる。 

7月の初め。ドピーカンの日中だった。早朝から釣りをしていて、疲れたし、あと数投したら、昼飯にしようと思った。本流の中流域のその場所は、水温が高くなってしまったか、ウグイが3匹ほど釣れただけ。
アウトリガーで、淵の岩盤の際を上流に向かって投げた。ラインの先端が水に着かないように、竿先を徐々に上げた。ラインの自重で、リーダーは下流に引っ張られるが、流速と調和がとれていて、不自然さは無さそう。
すると、リーダー全体が渦に引き込まれる感触があった。何気なくラインを引きながら、竿を上げると、根掛かりのようだ。岩盤か水中の岩に、フライかガン玉が挟まれたか。
しかし、根掛かりが、振動を伴いながら、寄ってきた。とんでもないサイズの銀色の魚体が見えた。
あっという間に水面近くに寄ってきたが、今度は魚のほうがこちらに気付いた。驚いて向きを変えて、対岸に疾走したり、魚雷が炸裂したようなジャンプをした。
ハリスは0,8号だし(この頃の0,8号はフナやウグイなどの小物用)、初めての大物だし、「きっと最後はバレちゃうんだろうな~」「大きいの掛かったけどバレたなんて言っても、あいつ見栄張って嘘ついてるわなんて思われるかもな」などと、弱気なことばかりが浮かんでいた。
それから約10分間、魚の動きに合わせて、河原を走った。最後にニジマスは疲れたようで、運良く淵尻の砂地に誘導できた。
銀色とピンク色が綺麗な48㎝。上顎に、フックが皮一枚刺さっていた。バレておかしくない状態だった。
フライ1年目で、幸運すぎてちょっと怖かった。もうこの先、永久にボウズでも構わないと思った。



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