2014年4月21日月曜日

northland fly rod その3

wet king 6番 9f

次に買ったのが、ノースランドのウェットキングという、ウエット用の6番9ftの3ピースです。

その当時、英国式の古典的な、やたらと高価な鳥獣の羽や毛皮を使ったウエットフライやサーモンフライを巻いた釣りが流行った。バブル期と重なっていたので、日本の自然には存在しない世界中の生き物の死骸を輸入して、日本の渓流魚を釣るのが、オシャレでカッコいい、という風潮だった。シロクマやアフリカの貴重種の鳥など、これらはどういう方法で採られ、乾燥加工され、輸入されたのか。私もそのことからついつい知らぬふりをしながら、欧州の伝統文化に浸った気分で、それまでの虫っぽい毛鉤から、英国名のついた装飾品のようなフライが入った箱をベストのポケットに入れた。さえない男が、そんなことで何かしらの優越感を求めたのだ。当然のことながら、そのことで女性にモテたことは、一度もない。

ウエットロッドは、しなやかで、小さな負荷でも、竿全体が弧のカーブに曲がる。下流側にラインやリーダーを張った状態でも、魚の食い込みを良くしようという設計になっている。
使い始めて気付いたのは、4番から6番になり、さぞかし遠くに投げられると思ったら、飛距離があまり変わらなかったことだ。それまでの4番のティップアクションは、中間部分からグリップエンドまでは硬くしっかりしてるので、前後にフォルスキャストしていれば、竿に引っ張られながら、ラインも前後に飛ぶ。しかし、このウェットロッドは、すぐにグリップ近くまで大きく曲がり、反発力も弱いので、ラインが長くなると失速気味になり、ループも竿の形状そのままの、広がりぎみで空気抵抗の大きな投げかたしか出来ずにいた。

ひょっとして、間違った買い物をしたかと思った。しかし同時に、どうしたらせめてダブルテーパーラインを20メートルぐらいは飛ぶのかと、自分で研究をしてみた。

その答えは、竿のグリップを前後に振ってはダメで、バットを十分に曲げながら、グリップを上下に移動させるという方法だ。ラインも遠くへ投げようというより、長さを確実に伸ばしていく感覚のほうがいい。グラスロッドや竹竿など、カーボンに比べて鈍重な感触の竿でのキャスティングに悩んでいる人は、一度試してみてください。

ウエットロッドの良いところは、ロールキャストがやりやすいこと。竿の長さもあり、バットから曲がるので、小さな動作でも、長いラインを前方に運んでくれる。ラインはダブルテーパーがいい。メンディングやフリッピングで流しこむ時も、ウエイトフォワードのように、ギクシャクせずに、なめらかです。

この竿、意外なことに、湖でも具合いが良かった。湖というと、張りのあるロングキャストに向いた竿を通常は選択する。ただ、自然湖でも人造湖でも、急斜面でバックは林で、という地形は多い。真夏など、鱒もバスもそんな場所がポイントになる。木から落ちるセミや甲虫を食べている。斜面に座って、大きなドライフライをロールキャストで投げて、波に漂わせたり、ほんの少し誘いをかけると、ガバッと出る。
また観光客が多かったり、障害物があったりで、バックキャストがままならない場所も、ロールがおすすめ。
このニジマスも、夏の日中に岸から10メートルぐらいで釣れました。なぜか7月の日中は、大きな魚が釣れます。8月の高水温にや餌不足に備えて、最後の荒食いをするのかもしれないです。ここのところ、あまりお目にかかれていませんが。





2014年4月19日土曜日

northland fly rod その2

その2

それからというもの、渓流のドライフライばかりやった。コツを掴めたのか、それからはヤマメもイワナも、あれっ?というぐらい、反応も多くなり、合わせのタイミングも覚えてきた。季節も、ほとんど冬の状態から、春になって、魚も水面のエサに眼がいくようだ。
Tさんにこの釣りを教わった中で一番驚いたのは、透明度がある川なら、解禁直後の冬景色の中でも、渓流魚は瀬に居て、ドライフライに食いつくことだ。この時期は、川底でじっとしているというのが、それまでハウツー本の定説だった。
またフライフィッシングというと、川幅のあるチョークストリームの釣りのイメージだったが、落ち込みと淵と瀬が連続する谷川のような渓相でも、テンカラ釣りのように上流に釣り上がることができるのも、新鮮だった。
休みの日だけでなく、空き時間があれば、ノースランド片手に釣りをしていた。雪解け水がおさまると、本流などいろんな川に通った。Tさんにウエットの釣り方も教わり、毛鉤とルアーの中間のような光るフライをニジマスがひったくるように出た。


その頃、釣り雑誌で紹介される渓流のドライの釣り方が、ショートリーダーで、ピンポイント狙い撃ちから、ロングリーダーでフライがナチュラルに流れる距離と時間を長くして、魚に違和感を持たせないで喰わせようという、俗に言うところの岩井スタイルに代わりつつあった。ニンフなどの水中に沈める釣りも、脈釣りに近いアウトリガーから、マーカー浮きを使ったルースニングが多くなった。そのスタイルに合わせて、ロッドもシャープなティップアクションから、やや長めのスローアクションタイプが増えていった。

私はどうも岩井スタイルの釣りが苦手で、従来スタイルで通した。自分のノースランドの竿も、ショートリーダーに向いていた。4番のラインに、竿よりやや短いリーダー。その先に、フライ。早く沈めたい時は、ガン玉おもり。それだけ。
シンプルな仕掛けだけど、水面から底まで狙える。リーダーが短いと、狙いの筋へ入り易いし、フライの位置も把握しやすい。誘いもかけられるし、流し毛鉤のように、扇引きもできれば、ルアーのように下流から上流へ逆引きも出来る。これが竿の2本分の長さのリーダーだったり、途中にウキが付いてると、竿へのダイレクトな当たりが伝わりづらくなる。 

7月の初め。ドピーカンの日中だった。早朝から釣りをしていて、疲れたし、あと数投したら、昼飯にしようと思った。本流の中流域のその場所は、水温が高くなってしまったか、ウグイが3匹ほど釣れただけ。
アウトリガーで、淵の岩盤の際を上流に向かって投げた。ラインの先端が水に着かないように、竿先を徐々に上げた。ラインの自重で、リーダーは下流に引っ張られるが、流速と調和がとれていて、不自然さは無さそう。
すると、リーダー全体が渦に引き込まれる感触があった。何気なくラインを引きながら、竿を上げると、根掛かりのようだ。岩盤か水中の岩に、フライかガン玉が挟まれたか。
しかし、根掛かりが、振動を伴いながら、寄ってきた。とんでもないサイズの銀色の魚体が見えた。
あっという間に水面近くに寄ってきたが、今度は魚のほうがこちらに気付いた。驚いて向きを変えて、対岸に疾走したり、魚雷が炸裂したようなジャンプをした。
ハリスは0,8号だし(この頃の0,8号はフナやウグイなどの小物用)、初めての大物だし、「きっと最後はバレちゃうんだろうな~」「大きいの掛かったけどバレたなんて言っても、あいつ見栄張って嘘ついてるわなんて思われるかもな」などと、弱気なことばかりが浮かんでいた。
それから約10分間、魚の動きに合わせて、河原を走った。最後にニジマスは疲れたようで、運良く淵尻の砂地に誘導できた。
銀色とピンク色が綺麗な48㎝。上顎に、フックが皮一枚刺さっていた。バレておかしくない状態だった。
フライ1年目で、幸運すぎてちょっと怖かった。もうこの先、永久にボウズでも構わないと思った。



2014年4月16日水曜日

フライロッド ノースランドは、すばらしい。

fly rod northland  (グリーンスタジオ)

northland club
初めてのフライロッドは、ノースランドのクラブシリーズという廉価版を買った。フライを教えてくれたTさんの勧めだった。7.6fの4番だ。小渓流でのドライで、ヤマメ釣りをした。最初の1匹は、指の長さ程度のチビヤマメだったが、ほんとうにうれしかった。1ヶ月近く、ボウズの連続で、自分にはフライは向かないのでは、と思っていた時に釣れて、魚にありがとう、と頭を下げた。
 
 
 

2014年4月8日火曜日

ABU ULTRA MAG XLⅡの思い出話

3月中旬から、5月中旬ぐらいまで、私のホームリバーは、雪解け水のため、釣りにならない。一般的な釣り用語の雪代水と違い、泥濁りになる。上流にダムが2つあり、そこに溜まった泥水が透明になるのに、2か月もかかる。

写真の電光掲示板の「放流中」は、ニジマスの放流でなく、ダムの放水注意の意味。暫くは、通ってもあまり良い釣りは期待できない。グリーンの濁りは、かえって大物のチャンスの時もあるけど、泥濁りはルアーやフライで、良かった記憶がほとんど無い。ただ、餌のぶっこみ釣りだと、泥濁りでも、釣れる。だから、もっと濁り時の対応を研究すれば、ヒットさせる方法が見つかるかもしれない。その前に、気持ちが折れてしまうだろうけど。

こんな時は、釣り人の特権である、思い出に浸って、精神の利息を受け取るのがいい。


これは、20年も前、日本海で釣ったアイナメだ。或る川の河口で、シーバスハンターというシンキングミノーにヒットした。川は雪解けで濁っていて、ちょうど今ぐらいの時期だ。ヒットの直前、トラウトなのか、シーバスなのか、60cmほどもある魚が何度かジャンプしていたので、ロッドがグイグイ引き込まれて、間違いなくその大物だと思った。岸に上がった魚を見て、予想とはサイズも姿も違い、思考がやや停止した。正直なところ、喜びは無かった。後になってから、アイナメでこのサイズはなかなか立派だと知った。そうしたら、急に自慢の1匹になった。

写真のベイトリールは、アブのウルトラマグ ULTRA MAG XL Ⅱ。初めてのベイトリールで、初めてのABUだ。
20年以上前に、中古で買った。
当時、代理店のブルーカード付きというのが、中古売買における水戸黄門の印籠だった。この保証カードがないと、日本ではニセ黄門の扱いを受けた。にもかかわらず、知人が正規品をカードを添えて修理を依頼したら、目の玉が飛び出る請求金額だったとのこと。なので、ソルトウォーターで使うのは、やめにした。

ラインのバックラッシュに泣きながら、いつもリールを呪った。それが、マグレで釣れると愛情に変わった。

まだ野尻湖が全国区の人気になる少し前、地元の釣り人しかいなっかった頃だ。ラパラのシャッドラップをダーターのように、水面近くで誘ったらヒットした。魚の引きに合わせて、滑らかにスプールが逆回転する。さすがは、ABUだ、と思った(他のメーカーのベイトリールは知らなっかったが)。
体高があって、ブリブリの肉付きの魚体だった。ウルトラマグで、ウルトラマグレの1匹。

竿はウエダのトップウォーター用のグラスロッド。ホームリバーの鱒釣りや、海のルアーチョイ投げなどでも活躍した、お気に入りの竿だ。スピンキャストリールを使えば、軽いミノーやスプーンも投げられる。

残念なことに、このメーカーはロッドの生産をやめてしまった。リールの正規代理店も、変わってしまった。釣りの思い出よりも、現実のビジネスの厳しさが、顔を出す。背筋が寒くなる。自分はいつまで釣りができるだろう。
と言っても、何かの努力やチャレンジ精神などは、やはり出来ない。今のまま、好きな釣りを続けよう。きっとこれが運命だ。先の将来なんて、泥で濁った水中のように、私には見えないし、わからないから。